理事長あいさつ

クトフェリンは分子量約8万の鉄結合性の糖蛋白質で乳汁、涙液、唾液や血液(好中球)中に含まれ、感染に対する防御あるいは免疫機能の増強等を担っていると考えられ、ヒトでは初乳に最も多く(6〜8g/L)含まれています。最近になって、ヒトとウシのラクトフェリンについて新しい機能が次々と明らかにされてきました。本学会がホームページ上で刊行している「日本ラクトフェリン学会ニュースレター」では、がん予防と治療・抗がん、HTLV-1による白血病の抗腫瘍効果、LPSによる抗歯周病作用、新たな受容体の同定、炎症性マクロファージ活性(TNF-α産生)の制御、抗うつ作用、創傷治癒促進、抗微生物(細菌、ウィルス、真菌)作用、骨損傷修復、内臓脂肪の低減効果、等に関する研究が紹介されています。このようにラクトフェリンの作用は、明らかな相互の関連性無く多岐に亘っています。またそれらの作用を担うレセプターの特定とシグナル伝達機構の解明にはまだ時間がかかりそうです。

このような不可思議なほど多機能を担う蛋白質の研究には、多くの研究者による集学的あるいは学際的アプローチと密な情報交換が必要です。その目的で2004年に「ラクトフェリンフォーラム」が設立されて、2010年に「日本ラクトフェリン学会」に改組し、1993年より開催されている「国際ラクトフェリン学会」と交互で偶数年に国内で学術集会を開催し、その構造、機能、臨床応用等についての最新の知見の交換を図っています。

この学会が会員各位のご助力を得て、日本のラクトフェリン研究の輪が広がり、その成果の世界への発信基地として一層発展することを願っています。